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Vol.1 

南城市のとある集落。

赤瓦屋根と自然農法でつくる畑がある、ゆったりとしたお庭の一軒家。

 

屋根には、門番のシーサーが一匹どっしりとかまえています。

撮影をしていると、シーサーの名前は照夫(てるお)だよと、お住まいのMさんが教えてくれました。

 

入居の際お世話になった、大家さんの名前から一文字とって命名したようです。

 

照夫に見守られ、入居して約3ヶ月過ぎた今日。

どう毎日を過ごしているのか、その後の暮らしを追っかけてみたく、Mさんちに少しばかりおジャマしてきました。

縛られない、どことなく“ゆるさ”がある感じが素敵で、親しみやすい。

 

Mさんは、県内でご活躍されている金細工の作家さん。

大学で工芸を学び、沖縄の伝統金細工に出会い来沖し、現在は作家として世に多くの作品を生み出しています。

 

「座して世界を思う」という熱い想いをもって火でカネを叩き、伝統を守る。

琉球王国時代から続く歴史のある金細工を、お師匠さまの背中を追い、“トンカチ”“トンカチ”という音を、ほぼ毎日奏でているそうです。

 

そんなMさんの小指には、工房の代表作品「結び指輪」がはめられています。

古民家の一角、柔らかい光が入る庭に面したところが、Mさんの仕事場。

 

畳一帖くらいの小さなスペースに、木の机の上には銀を加工する多種類のトンカチや道具箱などが並びます。

この古民家は、典型的な沖縄の民家の田の字型の間取り。

 

Mさんはその雰囲気を活かしながらも、ハンモックを吊るしたり、アメリカンテイストのソファを置いたりと、空間作りを個性的に楽しんでいます。

ハンモックは、住人!?のこてつお気に入りの場所。

 

こてつは、古民家に引越しを決めて、拾ってきた子猫の名前です。

 

窓際にいることが多く、「窓際のトットちゃん」から「徹子さん(黒柳)」を経由して、男の子だからと「こてつ」と名づけたのだそう。

 

突然の取材の依頼を、「ここも!ここも!」といって、いろいろと見せてくれたMさんは、本当に楽しそう。

 

お庭にある自然農園も、土作りから頑張ってはじめています。

 

交通の便もよく環境が抜群で、なおかつDIYで手を加えることができる「古民家」に的をしぼり探していたMさん。

「ごろ寝が出来て、堅苦しくない場所が良い」と言っていたことを思い出します。

 

最後に、定番だと思われる質問をしてみました。

「暮らしてみて、一番気に入っているところは?」

 

「入ってくる光が、明るすぎず暗すぎず、私たちにちょうど良いんです」

 

日向ぼっこしながら昼寝ができる、Mさんご夫婦にはちょうど良いあんばいの採光なのだという、Mさんらしい回答です。

 

Mさんのここでの今後のもくろみはというと、隣接している大きなガジュマルの木のクリスマスイルミネーション。

 

「昔は小さいガジュマルの木にイルミネーションした時代もあったさぁ」

と懐かしむ隣のおばあさんの影響もあるようです。

 

裏庭ですくすく育ったシークヮーサーを絞ったお酢のジュースの一杯が、Mさんちのおもてなし。幸せの一杯です。

 

 

 

 

地域の方とも溶け込み、南城市での田舎暮らしとこの家の持ち味を十分に楽しんでいるMさんご夫婦とこてつ。

 

縁があって出合ったこの古民家に、「長く居たい」と、そう言ってくれました。

 

 

 

企画室 島袋

南城市の古民家からはじめる、田舎暮らし

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